「えだまめ」しているラズパイ

30年ぶりに半田ごて握ってラズパイ勉強中。

WROOM-02で静電容量式水分計を作る (7)実機回路決定・実証編

◯やりたいこと

(6)のプローブ製作に引き続き測定器本体の製作に入ります。製作は以下の手順で回路の実証をしながら進めていきます。
1. (5)までの実験に基づき水分計測定器本体の最終回路を決定する。
2. 収納するケースの都合上WROOM02 用にピンソケットを使えずユニバーサル基板直付けとなる。スケッチの修正が出来なくなるのでブレッドボードに組んだ実機回路でロングランテストを行いバグ取りを確実に行う。
3. 実験段階で発生していたプローブ出力電圧の漸減減少対策
4. 気温変化によるプローブ出力の変化確認
5. アルカリ電池での動作確認
6. 本体を防水ケースに収納

◯やったこと

・実機回路図の決定

プローブから来たI2C信号をWiFiで飛ばすだけなので回路的には ESP-WROOM-02モジュール単体のみでいいのですが

1. 省電力化のためプローブ電源をFETで制御
2. AOUTを利用して電池残量を監視するための分圧回路

の2つを追加するのでコンパクト版のブレークボードを利用します。プローブ電源制御用の FETは電圧3.3V、電流10mA程度の制御ですのでプラスチックモールド型のPch FETであればほぼ何でも使えると思います。私はオン抵抗の低いものを探し秋月で売っていた2SJ497を使用する事にしました。
I2CのSCL,SDAはIO0,IO2を使い、起動モード設定用とI2C用のプルアップ抵抗を兼用にして部品点数を減らしています。

という事で製作する実機の最終回路図は以下の通りとなります。


(※この回路はプルアップ抵抗付きのモジュールをつなぐとその抵抗から電源が供給されVcc制御ができないと言う欠点があります。後程GND制御に変更した回路も掲載します。)

・プローブ出力の漸減減少対策

上記回路をブレッドボードに組み立てさっそく測定テストに入ります。

3日ほど走らせてみました。

 赤:プローブ出力電圧
 青:プローブ出力電圧の百分率ポジション(乾燥1.85V:0%、水中0.7V:100%)
 黄:動作用電池電圧をWROOM02 のTOUTで計った数値

電池電圧も10回測定して平均を取るようにし、測点の有効桁数を3桁にしてグラフをなめらかにしてみました。

結果にはやはり測定電圧の漸減(水分率漸増)傾向が出ています。途中水やりをしたため水分率が上がっていますが基本的な漸増傾向は変わりません。電池電圧は3.5Vありますし電源まわりの強化とかシールド線のアースとかいろいろと対策をとってみたのですがいっこうに効果が出ません。行き詰まってしまって「よし、心機一転、電池満タンで最初からやり直し!」と電池交換したところグラフの水分率にポンと変化が...。

「そっか!!」

ひらめきました。原因判明。
単純に電源に使っている3端子レギュレータのドロップ電圧を検討していなかったのです。なんたる凡ミス。

当初使っていたレギュレータはNJU7223という新日本無線製の3端子レギュレータ。

30uAという低消費電流が気に入って使用していたのですが、ドロップ電圧が低いながらも0.4Vあります。プローブに3.3Vを供給するためには電池電圧が3.7V以上ないとダメだったと言う当たり前のミスでした。3.7Vを下回ると電池電圧の変化がそのままプローブに出力されプローブの発振周波数に影響を与えていたのが原因。しかし理由がわかれば対策は簡単。ドロップ電圧の低いレギュレータを探します。
結果見つけたのがこれ。

同じく新日本無線製のNJM2845。消費電流が400uAとちょっと大食いなのが気になるのですがドロップ電圧は0.18V。これだと電池電圧が3.42Vまで下がっても動作させられます。
さっそくこのレギュレータを使って実験回路を組立てて実験してみます。

温度補正の検討もしたかったのでBME280も追加して温湿度も測ってみました。
完全に乾燥するまで測定。

結果はと言うと…。

やり〜。予想通りです。3.7Vを切ってもプローブ出力の漸減現象がありません。
測定環境の温湿度はクーラーのおかげかほとんど変化がなく測定にはなかなかいい環境でした。

濡らし方もいろいろ変えてテストしてみたのですが

漸減減少は現れず。

途中満タンの電池に交換してもプローブ出力に影響はなし。完璧です。

・気温の変化によるプローブ電圧の変化

測定器は外部での使用も想定しています。そこで低温環境内でプローブ出力がどのように変化するのかを確認するため実験機をタッパに入れプローブを濡らして冷蔵庫に入れてみる事にしました。
プローブを湿らせて4時間程常温に置き、

乾燥が始まった頃に冷蔵庫へ。
その後1日の経緯をグラフで見てみると

一旦乾燥し始めたプローブが冷蔵庫の調湿機能?のせいなのか乾燥が間延びしているように見えます。一緒に測定した庫内の温湿度を見てみると

温度はサッと下がっているのに対し湿度は上がったり下がったりのガチャガチャ。最近の冷蔵庫ってこんな機能があるんですね。
とは言え乾燥は着実に進んでプローブのキムワイプはすっかりカラカラ。
水分計と冷蔵庫が活躍しているなかなか面白いデータが取れました。

結果として気温10℃程度への15℃程の温度変化はグラフで見る限りそれほど影響はないように見えます。まあ水分率の絶対値はそもそも当てにしておらず変化を監視するのが主目的ですので、趣味レベルで測る分には常温帯での温度変化を余り気にしなくていいようです。氷点下付近の本格的な低温実験は冬期間実際に実機を外に置いてやってみようと思ってます。

という事でいよいよ測定器本体の製作に入ります。
ちょっと長くなりましたので続きは(8)に持ち越しです。